セブンイレブンのCMでは、ナナコポイントが二倍とか、ポイントサービスのCMをしているのだ。
よく考えてほしい。ツタヤポイントのCMがあるだろうか。(楽天ポイントはCMがあるが、楽天はネット通販であり、実店舗ではない。)
テレビCMという大金のかかる宣伝が必要なのであろうか。費用対効果はどうなのだろうか。
今回は、この現象を分析する。
平愛梨 CM セブン&アイ nanaco ナナコ 「ポイント2倍」 - YouTube
分析の効果
短期的な効果 個人情報に関連するポイントカードにより、情報が集まる。それらを分析することにより、ローソンは大きな成果をあげている。それを参考にしたのがセブンイレブン。情報分析の時代になった。そして、ローソンは、次の段階にすすんだ。情報分析力を武器に積極的に商品開発でき、その商品開発力を強みに地方スーパーを買収する、つまり経営戦略に影響が出るほど情報分析を使いこなしている。
長期的な効果 データ分析、ビッグデータという言葉がニュースになったが、ビジネスまで実体化した現象をみることにより、分析の仕事の具体的なイメージがわく。そのためのスキルを身につけることの重要性がわかる。就職転職、投資に関する知識として重要である。
本文
ナナコポイント二倍、これがCMの内容だ。ナナコポイントの知名度をあげることが目的だ。
ナナコポイントを説明すると、セブンイレブンとそのグループで使えるポイントカードだ。
では、なぜ、ポイントサービスのCMを大金を投資してつくり、流すのか。結論は、費用対効果が高いからだ。
具体例を説明しよう。
ローソンだ。ローソンには、2001年に三菱商事が出資した。当時ローソンは、創業25年。2015現在、15年経過した。
そこから、物語はスタートした。
ポンタカードを取り入れたローソンは、詳細な個人情報つきのポイントサービスを導入したことになった。そして、その情報を分析し、商品開発、サービス、在庫管理に用いた。
そして大きな成果をあげた。
それに関する記事はこちら。
kanjuseitosyakaitojounetsu.hatenablog.com
これが、40周年を超えるローソンを面白くしている。一言で言うと三菱商事の力だ。 ビジネスの戦略力は、時代の変化に対応し、商品や制度をかえている。それにより、面白み、変化を顧客は感じるのだ。その実例として、覆面調査や、
東北大震災以降の電気料金制度、廃棄、割引制度だ。
コーヒーがセルフサービスでないところに、従業員マネジメントという、
インナーマネジメントの知見が見られる。従業員の掃除のコスト、
しかもアンケート調査ではでてこないであろう点を分析している。
企業としてのマネジメント層のレベルの高さだ。 データ分析の強みはすばらしい。とくに、POSデータと実際のデータの違いの議論もすばらしい。ここでも従業員マネジメントの視点がある。データ活用があり、リサーチレベルが高い。
(正直言って、今後マーケティングリサーチ業界の存在意義が薄れる。
すでに、インターネットマーケティングリサーチに既存のマーケットリサーチ企業は苦戦を強いられているが。マーケティングリサーチの将来性は厳しいだろう。)
ローソンの経営にとって三菱商事は、力を発揮してきたが、データ分析は知能を使う作業で、三菱商事が出資しなければ、早期に取り入れることは難しかっただろう。セブンイレブンは出遅れているわけだ。セブンイレブンの会長は、新商品を会長直接試食することをアピールしていた。正直セブンイレブンの弁当はうまい、だがそれだけだ。コーヒーはイメージも含めたレベルはひどい、店舗の運営もいけてない。つまり組織としての経営力に魅力がない。
当然、セブンイレブンの組織も気づいている。そして、とりあえずポイント会員を増やすことに力を注ぐ、そして、冒頭のCMになる。
最もセブンイレブンの商品がおいしいのは、プレミアムシリーズを手がけて大成功したように、業界のつながりをつくる力が圧倒的だったからである。
プライベートブランドについての記事はこちら。
kanjuseitosyakaitojounetsu.hatenablog.com
消費財マーケティングと経営について書かれた良書についての記事だ。
先行するローソンは、どの段階にいるのか。
情報分析及び経営ノウハウを圧倒的強みとしているローソンは、様々な手が打てる。
都会と地方を押さえている。
まず、高級スーパーの買収だ。これが都会の戦略だ。
ローソンへの一括売却で合意する前に入札が行われ、三越伊勢丹ホールディングス(3099.T)も応札したが、高い価格を提示できなかった。
つまり、三越伊勢丹より金が出せるという強気の買収だ。この強気の根拠は、この記事で分析したとおりである。ちなみに、ナチュラルローソン一号店が自由が丘にできたのが2001年の三菱商事出資の一年目で、当時から成城石井とつきあいがある。三菱商事は慎重な会社で買収後の事業運営のスムーズさも問題ないと認識した。
地方はどうか。以下のように、目立たないが確実に力を発揮している。商品開発力が圧倒的な武器になっている。
そして、中国地方の中堅コンビニポプラとの提携だ。ポプラのお弁当を作る技術はすばらしい、店内でのほかほか弁当を提供するノウハウはすばらしい。
ポプラお弁当で画像検索してほしい。ポプラ弁当画像検索は、こちら。
ハードコアだ。
ローソンとポプラは14年12月に、ローソンがポプラに5%を出資する資本提携を行っており、これまでポプラは米や肉などの原材料の15%をローソンと共通化することで、コストを約5%程度削減したという。今回の共同出店により、営業面でもさらに連携を深める方針だ。さらに両社は今後、病院や学校、工場向けの小型店の出店でも協力し合い、今後3年間で150店舗程度を出店する計画を立てている。
以上のように、三菱商事出資に始まる、ビッグデータ分析、経営ノウハウが経営戦略に大きく影響を与えた実例を分析した。その表面的な部分が「ナナコポイント」のCMである。就職転職を考える人は、以上のような分析をもって行動していただけたらと思う。また、投資家の皆さんにはぜひこのような分析を提供してくれるアナリストと付き合っていただけたらと存じます。
以上。
補足
大前さんがセブンイレブンとローソンについて感想を述べている。当然、上記のような分析は行っているのだが、もらう委託料が安いと仕事がやっつけになるいい例が見つかったので、追加する。
ちなみに、大前研一さんが、ローソンと成城石井について小学館のネット記事で説明しているが、ギャラが安いのだろうか、やっつけにもほどがある。自分のビジネスで興味がないところにはやっつけすぎて面白い。
コンビニエンスストア業界では、全店売上高で業界2位と約1兆円もの差をつけてセブン-イレブンが圧勝している。理由は商品開発力だが、2014年に高級スーパーの成城石井を買ったローソンなら、セブン-イレブンの牙城を崩す可能性はあると大前研一氏は分析している。
(略)
その逆に、ローソンがやってはいけないのは、成城石井のノウハウを導入した商品を大量生産してローソンで安く売り、成城石井の高級イメージを崩してしまうことである。
それ以外の方法としては、もっと生鮮食料品を充実させてもよいのではないか。すでに野菜や果物は販売しているが、精肉や刺身も取り扱うようになったら、コンビニの様相は一変すると思う。コンビニは1日3回のデリバリーがあるのだから、やろうと思えばできないことはないはずだ。
成城石井の買収に疑問をもって、分析がいまいちなひとたちを紹介しておく。
ローソンと三菱商事の戦略と内部の分析までできないと構造は理解できなくても当然かとおもいます。
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