kanjuseitosyakaitojounetsu’s diary

コミュニケーション(意思疎通)、マーケティング、広告、メディアのブログです。経営分析、投資分析、ビジネススキルの目線もあります。これらの観点から様々な事柄を分析します。

【書籍紹介】武井涼子・ここからはじめる実践マーケティング入門

書籍タイトル

ここからはじめる実践マーケティング入門

 

書籍分類

マーケティング全般マーケティングリサーチ、ブランド戦略に関する書籍。

 

書籍テーマ

実践マーケティング入門というタイトルがしめすように、

マーケティングの現場で行うべきマーケティングの内容が書いてある。

定石のフレームワークが書いてあるだけでなく、内容を絞り、

現場で役にたつ内容が書いてある、実践本である。

本書のポジショニングマップは以下である。

 

 

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著者

武井涼子 グロービス経営大学院準教授

電通オグルヴィー出身

東京大学文学部社会学科卒業

コロンビア大学MBA

 

目次

 

一時間目

マーケティング・プランをたてる

 

マーケティングって、一体何?

マーケティングとは、売れる仕組みをつくること

マーケティング戦略の立案と実行プロセス

 

二時間目

マーケティング・リサーチの基本と実務

 

マーケティング・リサーチはなぜ必要?

 

三時間目

ブランド・マネジメントの基本と実務

 

・ブランドって何?

・ブランドはなぜ重要なの?

ブランディングブランド・エクイティ

ブランド・エクイティを育て、企業価値につなげる

・ブランドとは漢方薬のようなもの

三時間目

新しい時代のCRMとデジタル・マーケティング

 

・ブランドの持つ意味をコントロールする

CRMって何?

・顧客経験価値って何?

・デジタル・マーケティングで何が変わった?

・デジタル・マーケティングと顧客情報獲得

・インターネット広告の現在

ソーシャルメディア隆盛とデジタル・マーケティングの最新事情

おわりに

「ここからはじめる実践マーケティング入門」修了証書授与」

 

マーケティング・プランを成功させる4つのコツ

 

すばらしい点(概要)

 

この本は、全4回の授業を元に書かれた本だ。著者の初の著作ということだ。

実は、読んでいてわかることだが、マーケティング全般を述べているが、

4P(プロダクト、プレース、プライス、プロモーション)はさらっとしか

触れていない。つまり、フレームワークで考えると、経営戦略、事業戦略、

マーケティング戦略となり。マーケティング戦略は、swot分析、stp分析となり、

その後4Pとなることが定石である。しかし、著者はそのフレームワークにのらず、

マーケティングリサーチ、ブランド、

CRMとデジタル広告と述べている。マーケティング全般が1時間目、

マーケティングリサーチ2時間目、ブランドが3時間目、

4時間目はCRMとデジタル広告である。

著者は、マーケティングの実践の現場では、

フレームワーク化されている4Pやマス広告よりも、

もっと大切なことがあるという理由で、このような構成になっているのだろう。

現場で困っている課題というのは、調査の方法である。そして、

長期的にマーケティングにとって大切なのはブランドである。

現場の担当者が費用対効果の高い施策として、CRMとデジタル広告となる。

少しもの足りないところ

三時間目で語られる、ブランドマネジメントのところは物足りない。

端的にいうと、読んでいて頭にはいってこない。一つの軸が感じられない。

筆者の経験は、外資FMCGコカ・コーラZARAとか。)消費財メーカー

に対する広告代理店のマーケターの経験が主なため、ブランドのゴールを

決める業務に携わっていないからだと推測される。

 

広告会社のマーケターは、一つのキャンペーンや、ブランドを伝えていくことは

業務として行うのだが、そもそもどんなブランドを作るべきか、また、

論理で説明できない起業による情熱的なブランドつくりは、やった経験がない。

たとえば、コカ・コーラのブランドの狙うところをつくるのは、

コカ・コーラ社のアメリカ本社で働く人で、日本の外資系広告会社は、

それらを日本の市場で伝えていく末端の業務を行っているに過ぎない。

このような背景があり、この章はインパクトがない。

そのため、ブランドを説明する軸として、

シュミットやコトラーやいろいろでてくるため、

一つの軸に従っていない構成となる。著者は、

そのような外資系広告代理店の経験でリサーチが大変役に立つといった

リサーチ経験から解説してもよかったかもしれない。

本の編集者が、そのような構成では華やかさがたりないとか、

第二章でリサーチは十分に語ったと認識していたかもしれない。

 

四時限目の新しい時代のCRMとデジタル・マーケティングのところも

軸が感じられない。端的にいうと、著者の専門でないからだ。

時代の変化にともなって、デジタルとビッグデータ処理ができる時代になった

ことから生まれた事象であり、説明しておくべきことであるのだが、著者の経歴上、

デジタルに精通しているわけでもなく、ビッグデータ処理が

必要とされるわけではない。日本の外資系広告代理店は、

デジタルキャンペーンは行うが、デジタルは国境をまたぐので、

外資FMCGコカ・コーラZARAとか。)は、

デジタル媒体(facebooktwitterとか)とアメリカ本社で契約してしまうから、

外資系広告会社の日本支社では、グローバルから降りてきたキャンペーンが主流だ。

そのため、外資系広告会社のマーケッターは、

デジタルに詳しくなる環境要因はない。

(自ら考える人はいるし、広告賞をとるようなキャンペーンに結びつけることは、

あるが、媒体をアメリカ本社で押さえられている影響は大きい。)

 

おすすめする読者

マーケティング実務者、現場でいろいろなことに対応しなければいけない人

 

読むべき場所

マーケティングリサーチの部分

大変丁寧に書かれている。

調査企画をたてることの大切さや、そのための企画に関する課題の視点は大切にすべきである。

以下、少々本内容を述べる。

調査のステップがすばらしい。

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現場では、このような指針が必要だ。

 

 調査企画書に必要な項目がのっている。

 

 

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 調査には、マーケティング課題と仮説が必要と述べている。

 

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 ケーススタディでカップめんを取り上げている。これは、調査企画。f:id:kanjuseitosyakaitojounetsu:20171103133959j:plain

 

 ケーススタディでカップめんを取り上げている。これは、調査の内容。

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ぜひ参考にしていただきたい本である。