自動車史に残る大事件だ。
事件の概要が損失額も含めて明確に、判明する前に最高経営責任者が辞任した。
これはすごい。22日に一報が入り、23日に辞任だ。
(実際は、一年以上不正追求されていた。
焦点:独VWの不正告白、当局と繰り広げた長期攻防の舞台裏 | Reuters
)
これは、分析する価値がある。
CMの最後のフォルクスワーゲンがボロクソワーゲンと聞こえるようになってしまった。
フォルクスワーゲンのブランド価値は大きく下がるだろう。高級車である、アウディ部門を中国あたりが買うかもしれない。中国人のドイツ車好きは異常。ボルボに続き、アウディも中国人ブランドの仲間入りだろうか。
この自動車の歴史にのこるニュースを分析しよう。
分析の効果
短期的な効果 フォルクスワーゲンの事件の背景を抑えておくことができる。
長期的な効果 ブランドを大きく毀損した、フォルクスワーゲンがどのように回復するか、教科書にのるようなテストケースを目の当たりにすることができる。注目の価値ある事実だ。
本文
まず、事件の概略だ。
アメリカでのディーゼルエンジンの数値をごまかしたという話。
それで、まずかかる金が約9,700億円。これは、最低限の損失だ。これからどれだけあがるかは現時点では、わからない。(存在する希望は、過去のGMの意図的な欠陥隠しが10年で900億円の損失だった。)
1,100万台の車両が関係する。この数値の影響を分析する。
フォルクスワーゲンについてのおさえるべき基礎知識
分析のために、数値を比較するために 押さえるべきは、フォルクスワーゲンという組織。
フォルクスワーゲングループは、ブランドでざっくり言うと、フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェがある。
ASCII.jp:ポルシェ16万台はVW470万台とほぼ同じ営業利益を稼ぎ出す
一番わかりやすいのがこの記事。
フォルクスワーゲンの2013年12月期の販売台数は973万台、売上高は27兆1870億円です。(略)
「VW」ブランドはの販売台数470万台、売上高は13兆7168億円で、いずれも連結業績のほぼ50%を占めています。VWは文字通りフォルクスワーゲンの基幹ブランドなのです。
VWの営業利益率は過去3年間で3~4%と低く、しかもやや低下傾向です。営業利益は毎年4000億~5000億円程度で、連結営業利益約1兆5000億円のうち、VWの貢献は25%程度に過ぎません。
アウディの年間販売台数は130万~150万台とVWの3割程度ですが、利益には大きく貢献しています。アウディの営業利益率は一貫して2ケタを保ち、営業利益は毎年約7000億円とVWを大きく上回っています。利益で見ると、フォルクスワーゲンの稼ぎ頭はアウディなのです。
「ポルシェ」ブランドは2012年8月からフォルクスワーゲングループ入りしました。通期での業績が連結決算に反映されたのは2013年12月期が初めてです。ポルシェの販売台数は16万台と少ないものの、世界中で圧倒的なブランド力を背景に営業利益率は18.0%と大変高く、営業利益3559億円はVWの3994億円に迫ります。
要約すると、フォルクスワーゲンは、大衆車で利益は、低いが大量に売れる。500万台売れる。アウディは、100万台売れて利益が大きく出る。ポルシェは16万台だが、利益率がすごい高い。しかし、そもそも売れない。フォルクスワーゲンは、大衆車で、しかもヨーロッパでは、半分がディーゼル車。その不正はダメージが大きい。
毎年、500万台売れるうち、半分がディーゼルで250万台。それが数年間の不正で1,100万台。
不正ソフトを使っているかどうか、不正ソフトと認識されるかは当局の判断次第。
これは、経営が傾く数値だ。一年の利益が1兆5,000億円で、最低損失が、約1兆円である。
そして、失ったものはすでにある。株価とブランド価値だ。ボロクソワーゲンだ。
自爆したフォルクスワーゲン、株価ボロクソバーゲン : 市況かぶ全力2階建
株価は、半分になった。
すこし深い分析
さらに、分析は、続く。フォルクスワーゲンブランドが売れないと表面上の数値よりもダメージが大きい。それは、従業員を通した政治への影響と大量販売によるコスト削減と、研究費の影響だ。
まず、従業員への影響だ。従業員がリストラされると政府への不満があがる。そのため、膨大な労働者を抱える自動車会社は政府への意見が強い。また、従業員は家族の分も選挙権をもっていて大変労働組合も強い。アメリカの自動車会社の労働者の力が強すぎて、GMがつぶれたのは記憶に新しい。
次の影響は、大量販売によるコスト削減だ。従業員の成長ともいえる。大量販売には、大量生産がある。その大量の生産により従業員の成熟がある。そして、その成熟は、フォルクスワーゲングループ全体のコスト削減に役立つ。それは、アウディやポルシェのコスト削減に役立つ。
最後に、研究費だ。具体例で言おう。ポルシェカイエンの中身は、フォルクスワーゲントゥアレグだ。ポルシェの中身は、大衆車フォルクスワーゲンなのだ。
それは、車両の車体共有化である。(価格の違いはブランド力だ。)
この共通の研究開発費が捻出できなくなるかもしれない。
ゴーンさんの意見
一方、ルノー日産のゴーンは冷たい。
ルノー日産グループで800万台だから、ライバルの失敗にチャンスを感じているだろう。
もっとも、年収10億のゴーンはリスクを犯さないよ。
日本限定対策
日本では、該当のディーゼル車はない。あるのは、ブランド価値の毀損。イメージが悪い。
私がコンサルなら、ブランドイメージコンサルをフォルクスワーゲン日本におこない、同時に、競合の外車メーカーにシェアを奪いましょうとコンサルするという展開が思いつく。
個人的には、ボルボが好きだ。ボルボの労働組合を研究したときに思ったのは、ボルボの労働組合の資料は大変詳しくて、魅力的だった。
参考資料
今回の不正ソフト技術について
【VW匠の技】似非クリーンディーゼル技術の極みを検証してみた | 膝と相談させてください
フォルクスワーゲン内部では知られていた話かもしれない
「ゴキゲン♪ワーゲン」のVWに何が!?日本法人社長の唐突な辞任劇が生んだ波紋|モビリティ羅針盤~クルマ業界を俯瞰せよ 佃義夫|ダイヤモンド・オンライン
一番読んでいただきたい記事はこちら。
kanjuseitosyakaitojounetsu.hatenablog.com